お師匠さんからの学び

 あなたのお師匠さんは誰ですか。
 あなたがそう聞かれたら、どう答えますか。

 私は学生の頃、お師匠さんが多くいました。ただし、「この人はすごい!」「ここは見習いたい!」と思った方々に勝手に弟子入りして、真似たり、技を盗んだりしていましたので、お師匠さん本人からすれば、そういう認識ではなかったかもしれませんが。

 絵本作家の五味太郎さんは、『じょうぶな頭とかしこい体になるために』(ブロンズ新社、1991年)という本で、「先生」には二種類あると書いています。一つは、生徒から「あなたは私の先生だ」と言われてなる先生。もう一つは、生徒に「私があなたの先生だ」と言ってなる先生。私は前者の先生を「お師匠さん」と呼んでいます。

 多くの場合、お師匠さんは不親切で、きちんと教えてくれません。「学び」というものは、教え手が定めるものではないと知っているからです。師弟の関わりの中で、お師匠さんが発する言葉やふるまい、何気ない所作から、学び手が「見いだす」ものだと捉えているからです。

お師匠さんからの学びは、「わたし」が主語です。自分が見いだし、自分で身につけ、自分でものにしていく学び。だからこそ、生涯にわたって、大きく影響します。若い日にさまざまな人と関わりながら、「この人だ!」と自分が思えるお師匠さんと出会われていくことを希っています。

 あなたのお師匠さんは誰ですか。
 あなたはお師匠さんから何を学びましたか。

京都市ユースサービス協会『ユースサービス』vol.4「ぷち・メッセージ」掲載原稿を転載しました。