大学のNPOインターンシップの課題のいくつか

 先日ある大学関係者とNPOインターンシップのことで意見交換を行ったのですが、そのひとつの話題は、企業へのインターンシップNPOへのインターンシップでは、事前学習の内容が同じでよいのか?というもの。



 僕の考えは、異なるべきではないかというものです。というのも、NPOへのインターンシップの場合は、個人にとっての目的意識だけではなく、いかに個々人の社会に体する問題意識を育み、その2つの意識をすり合わせるのかが事前学習の最低限のラインとして必要になるからです。



 将来の職業/職種の選択材料集めのため、コミュニケーションスキルを磨くため、自分の力量を試したいため、社会で活躍している人の仕事ぶりを間近で見るため…といった個人的な目的意識がしっかりすることは、もちろん一定は必要です。



 しかし、「目指すべき社会像」を掲げ、その旗のもとでボランタリなー人々が集う、市民公益活動(事業)の現場であるNPOは、「わたし」と社会の関係性に関心を払います。この場で学んだことを、どのように公共利用するのか?と。その公共利用の方向性と団体のミッションの方向性が一致したところで、良い実習が実現することは言うに及ばないことでしょう。



 もちろん、全ての学生にいきなりそれだけのことを求めるのは大変でしょう。だからこそ、こうしたことをどれだけコーディネーター(教職員)が理解し、「社会との関わり方」をモデル的に示していけるかが問われます。ここで大学だけでNPOへのインターンシップの事前学習を「やりきる」ことの難しさが出てきます。NPOとの教育協働は、実習のみならず、事前学習からビルトインされるべきではないかと思います。



 また、近年、学生と受入団体のミスマッチ感も増えているということでしたので、次のようなお話をいたしました。



 ここ10年で急速にインターンシップというものは大衆化しましたが、この大衆化の中で、受入団体としては「昔のような短期でも成果をだす位、ガッツのある奴が減ったな〜。」と不満を持ちやすくなっており、「であれば、長期実践型でじっくり育てて成果を得たい」との意向が強まりやすくなっています。しかし、学生は大衆化しているインターンシップというものを「とりあえず取り組むもの」との認識が強まっており、よりハードルの低いものを志向する傾向が見られます。数年前には、インターンシップに何社行ったのかが話題になることはなかったですが、今は『就職ジャーナル』(リクルート刊行)の誌上でも、何社行ったのかがひとつのトピックになっています。



 「何を貢献してくれるのか?(何をしたのか?)」を見る受入団体と、「どこにどれだけ行ったか?」を見る学生という構図、ここにミスマッチ感の根があるのではないかと考えています。こうなってくると、スクリーニングを厳しくするか、スクーリングを厳しくするかにしないと、インターンシップは「コーオプ教育」のひとつではなく、「就職マッチングシステム」のひとつになりかねません。いや、既になっているとも言えます。



 この際、就職市場としてはまだまだ未成熟なNPOでは、インターンシップの「うまみ」が感じられなくなっていくのは当然のことです。根深い亀裂にならない内に、こうした実態をしっかりと受入団体と共有し、解決の方向性を模索していくべきではないでしょうか。



 規模と多様化を追いかけた10年の次は、教育効果と現場での貢献効果の両方の質が高いプログラムデザインが求められてくるはず。そのためには、大学がどれだけ学外の機関と企画段階から教育協働に取り組めるかでしょう。