アートがひらくコミュニケーション

 気がつけば6月も終わりですね。。Macに変えてから、シチズンシップ共育企画のサイトの更新が滞りがちですが、今週末に大幅に更新しますので、今しばしお待ちを!



 この間、神戸ワークショップ研究会での「ファシリテーターの基礎スキル」を考えるワークショップや千葉のNPOクラブ主催の広報力パワーアップ講座など、幾つかの学びの場を担当させていただいたり、幾つかの研究会に参加させていただきましたが、特におもしろかった仕事が、23日に行なわれた上町台地からまちを考える会4周年記念事業として行なわれた「上町台地コミュニケーションデザイン」というシンポジウム。



 僕は第3部「上町台地をデザインする」というパネルディスカッションの進行を担当しました。第1部がこれまで同会が取り組んできた活動を振り返るもの。第2部が永田宏和さん(NPO法人プラスアーツ)に講演していただき、「次の一手」を考えるヒントを場にご提供いただきました。第3部は永田さんのお話を受けて、これからどのように各人が現場で取り組むのかを考えるセッションでした。



 永田さんはアートやデザインの力を活かして、普段であれば起きないであろうコミュニケーションを引き起こしておられるのですが(そしてその引き起こしたコミュニケーションでもって新たなものをつくりだしている!)、日本デザイナー学院や大阪成蹊大学芸術学部でデザイナーの卵と向き合う授業をしてきた自分としては、本当に得心いくものでした。



 パネルディスカッションでは、「誰と誰」/「誰と何」とのコミュニケーションを引き起こすのかということで、現世代と将来世代、生活の知恵と現在の知識などをつなぐという観点で問題提起がなされました。詳細に書くとこのブログは一つの大掛かりな論考となってしまいますので、割愛しますが、印象に残ったのは「将来世代の選択する余地をできるだけ残して、まちを継承していくこと」というくだりでした。



 自分たちの現在のまちづくりの取組みが、将来世代が何かに取り組む時の選択肢を削ってしまうことに慎重になりつつ、展開されるべきという考え方は、現在の住民の声をワークショップで取り入ればいいという次元とは全く違うものでしょう。



 コミュニティ内の「水平的な多様性」だけではなく、時間軸で見て「垂直的な多様性」についても思いを馳せるべきということですが、今後のまちづくりを考えていく上で、大切にしたいものです。



 そうした将来世代の参画を進めるためにも、コミュニケーションデザインの工夫は欠かせないわけで、永田さんの話が常に頭の中をおおった時間でした。進行をしながら、いい勉強をさせていただきました。ありがとうございます!



cafe.jpg ちなみに、最近読了したものに、佐々木雅幸編『CAFE−創造都市・大阪への序曲』(法律文化社、2006年)という本があるのですが、そこでも「アート&デザイン」のクリエイティビティを活かしたまちづくりについて、多彩な論考が所収されており、コミュニケーションデザイン/コミュニティデザインを考えていく上では、示唆深い一冊です。



 創造都市とは簡単に定義すれば、「市民の活発な創造活動によって、先端的な芸術や豊かな生活文化を育み、革新的な産業を振興する『創造の場』に富んだ都市であり、グローバルな環境問題や平和の問題とともに、失業や不安定就業など地域の諸問題を、草の根ら持続的に解決する力に満ちた都市」のことである。(前掲書、p.2)



 ちなみに、『CAFE』では以下のようなくだりもあります。



 クリエイターが自分軸からの発信を行うことで、価値観を同じくするクリエイターやクライアント、代理店と出会い、そこから新たな仕事につながるというサイクルが、ここかあ生まれてきている。「依頼される仕事」と「仕掛ける仕事」「アイデンティティとしての仕事」とのバランスを取りながら、クリエイターとしての幅を広げ、そのキャリアを重ねていく。請負業であるクリエイターが進むべき道筋のヒントが、ここにある。(前掲書、p.114)



 ファシリテーターにも通じる言葉です。僕も「依頼される仕事」だけに振り回されずに、「仕掛ける仕事」もきちんとしてきたいものです。