考える力は確かに存在している。

 僕が担当したことのあるワークショップの対象者は、これまで「高校生から老人会まで」という風に言ってきましたが、この日その表現が変わりました。「小学生から老人会まで」になりました。



 昨日は少年少女合唱団の子どもたちを対象にワークショップを担当しに、シチズンシップ共育企画のスタッフ3名と一緒に福井県敦賀まで行って参りました。幼稚園児から中学生までを年齢の近い子たちで4グループにわけ、僕を含む4人のファシリテーターが各グループにつきました。



 テーマは「杉原千畝の心を考えるワークショップ」。杉原千畝さんとは、第二次世界大戦中にリトアニア日本大使館に大使として駐在し、亡命を希望するユダヤ人6000人の命を助けた方ですが、子どもたちが8月にその杉原さんをモチーフにしたミュージカルをするということで、今回のワークショップ開催に至りました。



 子どもたちが杉原さんの人生を理解できた上でミュージカルに臨めるように、ということでオーダーいただいたのですが、今回大切にしたのは歴史的事実の理解ではなく、自分は杉原さんのしたことをどのように考えるか?という個々人の杉原千畝像の形成です。



 ユダヤ人を助けるべきか、自らの家族を守るべきか、この苦慮煩悶の場面で「あなただったらどうする?」と考えてもらえるように、丁寧に「ほぐす」時間をもちながら(人形劇や読み聞かせもしました)、プログラムが進められましたが、最後にはこちらが圧倒されるに至りました。



 「せんそうって何?」と言っていた幼稚園児の子が、最後には「あなたが杉原千畝だったらユダヤ人を助ける?家族を守る?」という問いに対して、手を挙げて、しっかりと理由を添えながら全員の前で意見を言うのです。



 また、ある小学生は本当に杉原千畝の心になりきって、「本当にどっちも大事で、答えが出せない」と苦慮しているのです。ここで「ユダヤ人を助けます」と言ってみせるのはいとも簡単なのにです。



 僕たちは子どもの考えるチカラや想像力をもっと信じるべきなのでしょう。考えられる環境をつくれば、子どもたちは考えられます。そのことを強く確信した一日でした。