地域のアイデンティティ

 12月2日・3日と朝から夕方まで連日、鳥取で「思いを事業計画に」という講座を担当しました(詳しくはシチズンシップ共育企画のサイトを参照)。



 「思いをカタチに」ならよくあるフレーズですが、思いを「企画」としてカタチにするだけではなく、中期戦略を見越した「事業計画に」まで発展させようというのですから、野心的な提起です。どのようにその展開を学びやすいように提示するのか、私にとっていい訓練になりましたし、「事業計画作成のポイント」を整理するいい契機にもなりました。



 こうして新しい(チャレンジングな)オーダーが自分を磨いてくれます。(全ての研修でというわけではないですが)出版でいうところの編集者の役割を、研修企画担当者がしてくださると、講師・ファシリテーターといい協働が生まれると思います。



 さて、今回の講座の特徴は、地元の方を事例報告者としてお招きし、私が質問で事例解剖するという時間を両日でとった、ということです。



 いずれの事例も骨太で、聞き手の自分がついつい聞き入ってしまうほどに、味わい深い事例でありました。その細やかな報告はここでは致しませんが(その内、鳥取県のウェブページで紹介されるはずです)、お二人の話から出されたのは「動いてなんぼのもん」というメッセージであったと思います。



 「誰もしないならやるしかない」「しつこくやることが大事」「とりあえずやってみる」、こうした言葉で提示された「動いてなんぼ」は、いずれも「わがまち」に生まれ育ち、ただただ好きだから(ダメになるのは放っておけない)という思いに支えられていました。



 谷あいにある17戸の新田集落のむらづくりに励まれる岡田さんが「社会貢献ではなく社会的責務としてむらづくりを捉えている」と仰っていました。そこまでに「わがこと」として、むら/まちと向き合われる姿勢には脱帽。



 岡田さんは「職場だけではなく、よって立つ文化、地域のアイデンティティがないと若者は残らない。」とも言葉を続けられました。ただ単純に働く場所(雇用機会)だけを用意しても、それであれば、都会で働くことの魅力に負けてしまうでしょう。「ここで働きたい」という思いが紡がれてこそ、働く場所を創出することの意味が出てきます。



 もうお一人の事例報告者である石村さんは、観光という視点から「『自然があって、温泉があって、人情もある』というだけなら、日本中にある。そこの地域にしかない独自性を見出さないといけない。」といった話をされました。



 地域のアイデンティティなり、オリジナリティといったものは、すぐにぱっと見つかるものではないでしょう。世界を知り、他地域を知り、その中で自分の地域のポジションを確認し、これかなぁあれかなぁと模索しながら、浮かび上がってくるものでしょう。



 どんな活動もそうですが、とりわけ「むらおこし/まちづくり」の活動は、本当に根気強く「動き続ける」ことが大事なんだなと再確認いたしました。



 本当に興味深い事例でした。今回の出会いもまた感謝感謝です。