これからの「幸せ」の話をしよう

 「幸せのものさし」が、こじんまりなものになっている。
 夫がそこそこの収入を稼いで、妻は子どもの成長を楽しみに子育てに精を出し、週末は家族でショッピングモールや市街地をぶらぶらする。そして、自分たちはいわゆる「幸せな家庭」を築いたと思いながら、そこそこの満足に浸る。このような「幸せ」のイメージは、決して古いものではない。若者(特に女性)の一部で今また、リバイバルしているものである。
 一昔前のように消費を通じて自己表現し、経済的なものさしで幸せを測るわけではない。身の回りのささやかな出来事に幸せを見いだして安心を得る。そこには社会の中で自分を生かすことや挑戦すること、新たな人間関係を広げて私の世界観を豊かにすることで感じられる喜びはない。また、自らの暮らしを規定している社会構造を変革していくことで得られる解放の喜びはない。
 この状態は、不幸ではない。しかし、その人が得られうる幸せが見渡しきれていないのではないか。この得られうる幸せを「潜在的幸福可能性の領域」と呼びたい。
 シチズンシップ共育企画では、高校生が社会づくりの担い手としての意識と行動力を育む機会として「ユースACTプログラム」を実施している。このプログラムで高校生は暮らしの中の違和感を手がかりに、社会への問題意識を育み、社会課題解決の企画を立案/実行していく。この間、高校生は社会参加の中で得られる幸せと喜びに気づいていくこととなる。潜在的幸福可能性が顕在化していくプロセスとも言えよう。
 大阪府男女共同参画推進財団は様々なプログラムを通じて、生きづらさを抱えている若者に対して、男女共同参画社会の視点から浮かび上がってくる潜在的幸福可能性に気づく機会を提供し、こじんまり化が進む「幸せのものさし」の(再)拡張をもたらしている。その必要性は高まるばかりである。
 あなたはどのような「幸せのものさし」で、自分の暮らしを見つめているだろうか。
 これからの「幸せのものさし」は、どのようなものであるべきだろうか。

大阪府男女共同参画推進財団『Dawn通信』第7号掲載原稿を転載しました。